「コーダ あいのうた」★★★★☆

「あまりに感動的だったので、2回目観たいんだけどご一緒にどう?」という友人の誘いで鑑賞。あらすじは大体、頭に入っていたから「想定内の感動作だろうな~」とちょっと覚めた目線だったんですが、もう最後は号泣でしたわ。


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ストーリーはざっとこんな感じ。

海辺の町で暮らす女子高生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で唯一耳が聞こえる。幼い時から一家の通訳となり、家業の漁業も支えてきたルビー。新学期、密かにあこがれているマイルズと同じ合唱部を選択刷るルビーだが、彼女の歌の才能に顧問の教師が気づき、音大受験を勧める。だが、ルビーの歌が聞こえない家族は、彼女の才能が信じられず、家業の方が大事だと大反対。ルビーも悩んだ末に、歌を諦めて家族の助けを続けることを選ぶのだが。。。

この映画に多くの説明は必要ないと思います。

耳が聴こえる、聴こえないに関わらず、親と子供が本気で関わっているか?それに尽きる映画だなと。ルビーの家族はいつも本音。ある意味、親は親らしく、子供は子供らしくない家庭かもしれない。父親はルビーを通訳に医師に自分の「インキンタムシ」の症状を赤裸々に語るし、「セックスは2週間禁止」という医師に「そんなの無理だ!」と娘を通じて伝えるという、開けっぴろげさ。羞恥心のかけらもありません。でも、そんな明け透けな両親をルビーは愛しているし、いつもケンカしているけど、お互いを思いやっている。

しかし、せっかくのルビーの美声が、ファミリーには聴こえない。なんと悔しいことでしょうか?高校のコンサートでソロを務め、他の父兄に拍手喝さいを浴びる娘の声が聴こえない・・・両親の悔しさたるやないでしょう。ここで女性監督のシアン・ヘダーは見事な演出を見せます。つまり、ルビーの歌声、その他の音声を一切オフにするのです。観客は数分の間、無音の映画に向き合うことになる。静まり変える劇場。いつもはドルビーサウンドが響き渡っている劇場には、明らかな違和感です。

しかし、「これがルビーの家族が生きている世界だ」と監督は観客に伝えたかった。そして私もそれを体感しました。無音の世界。この数分のシーンがこの映画をさらに素晴らしいものにしています。

耳が聴こえない人の、独特のやり方で、娘の歌を聞き取ろうとする父親。いつまでも子供だと思っていた娘を手放せない、子離れしていない母親。そして、いつも悪態ばかりだけど、妹の才能を一番に信じ、家族の犠牲になるな!と背中を押す兄。

最高の家族ではないでしょうか?音大のオーディション会場に家族が潜り込んだのを見たルビーは、ある方法で歌を彼らに伝えようとします。果たしてルビーの歌声は、聾の家族にどうやって聴こえるのか?

もうこの辺りから、Forerstは嗚咽に近い号泣で、臨席の人たちにもかな~り怪しまれたいたはず・・・(お恥ずかしい)。もう、最近どの映画観ても泣いてしまうのよ。これも加齢現象?すべてを加齢で収めようとする癖は良くないが。

いやはや、感動作であることは想定内だったけど、その演出、俳優の演技力は想定外でした。

父親役を演じたトロイ・コッツァーは、自身も聾でありながらプロの役者としてキャリアを重ねている俳優。今年度のアカデミー助演男優賞にノミネートされています。母親役のマーリー・マトリンは、その昔「愛は静けさの中に」(87年日本公開)で、聾者の女性として初めてアカデミー主演女優賞を受賞した人物として、Forestの記憶にも刻まれていました。当時中学生だったForestは、この映画の存在を知りながらも、なんとなく陳腐な(?)邦題と、ちょっとシリアスなテーマを敬遠して、映画館には行かなかった。。。でも、この映画で共演したウィリアム・ハートが、マトリンと恋仲になり、一時期同棲してたというニュースなどは何故か覚えていた。既にこの頃からゴシップ好きの片鱗が。。。

はい、ともかく!ぜひお父さんにはアカデミー賞を獲って頂きたい!2022年、まだ3か月しか経っておりませんが、一番泣かされた映画です。あと9か月で「コーダ」を上回る映画に出会えるか?!乞うご期待。