是枝監督、渾身の韓国映画「ベイビー・ブローカー」

是枝監督による初の韓国映画&今年のカンヌでソン・ガンホに主演男優賞をもたらした作品。ということで、かなりの話題作だったにもかかわらず、なかなか食指が動かずにいました。先週の韓国出張で出会った業界人ほとんどが鑑賞済だったので、こりゃいかんわ!というわけで、遅ればせながら映画館へ。

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ソン・ガンホカン・ドンウォンペ・ドゥナ、IU・・・という、誰も見ても主演級の韓国を代表する豪華な顔ぶれ。彼らが一堂に会してだけで「ああ、これは一定のレベル以上の映画になってるだろうな」という安心感あり。

しかし!惜しまれるのは、「期待以上でも、以下でもない」ことなんです。

養子大国・韓国における捨て子問題、そして違法に赤ちゃんを取引するブローカー、子供を捨てた母親、孤児院の少年が、いとも簡単に疑似家族化し、旅を共にする過程があまりに安易というか、想定外のことが何も起きない。「こうなるだろうな~」という方向に、素直に物語は進んでゆきます。彼らを現行犯逮捕すべく追跡する2人の女性刑事も、まあ!良い人たち。誰も悪人らしい悪人が出てこないんですよね。

韓国映画お得意の血なまぐさいバイオレンスや性描写とも無縁で、万人向けというべきか?私Forestは仕事柄、古い時代の韓国映画から見つくしてしまった感があるので、正直物足りなかったんでしょうね。「え!これで終わり?」みたいな。もっと二転三転、捻りがあると思っていた。

 

韓国の誇る名優ソン・ガンホ氏にとっては、これくらいの役なら朝飯前でしょうし。まあ、敢えて言うなら、IUは歌だけじゃなくて演技もうまいなと!歌手は数分間の歌で観客を魅了する演技者なので、当然と言えば当然なのでしょうけど、改めて韓国芸能界は人材の宝庫だなという思いを強くしました。俳優もプロ並みに歌が上手い人多いしねえ。なんでしょう、この芸事に長けた国民性は。やっぱり遺伝的なものですかね。

世間にも高レビューが溢れているようなので、「期待外れ」的なことを書くのは気が引けたのですが、Forestのブログは忖度なしが基本ですので!

 

ただ、多少なりとも韓国の映画やドラマ制作の現場を垣間見たことのあるForestとしては、一人韓国に乗り込んで、韓国の俳優&スタッフを相手に映画を撮った、日本人の是枝監督の苦労は想像は想像するに余りあります。日本とは全く勝手の違う世界ですから。「ベイビー・ブローカー」で是枝氏は、韓国社会と文化、仕事の進め方を熟知した日本人監督になっているはず。一度きりで懲りてしまうのか?それとも、韓国映画の魅力にハマって2作目に行くのか?Forestとしては後者に期待です。