「あの夏の子供たち」★★★☆☆

火の車の会社を抱えて、資金繰りに苦しむあまり、衝動的に自殺してしまった映画プロデューサー。

後に残された妻と3人の娘が、彼の死を乗り越えて前に進もうとする静かな再生の物語。

あの夏の

重いテーマにも関わらず、いつ見てもForestの心を惹きつけるパリの街並み、田舎の陽光、そして父と娘たちとの温かい時間が、ふんだんに映し出され、観る者をどよ~んとした気持ちにはさせない、そんな不思議な映画でした。

街を歩きながら、車を運転しながら、そして家族とのバカンスの時ですら携帯を手放せない仕事人間のグレゴワール。でも同時に良き家庭人であり、妻と娘たちを心から愛している様子が伝わってきます。

借金で首が回らず、とことん追い詰められた状態であるのを妻にも理解され、「もう映画の仕事は止めてもいいじゃない?」と励まされていたのに、死を選んでしまう…。

エンディングにも流れていた「ケ・セラ・セラ」という国民性かと思っていましたが、やはり追い詰められた人間は、思い切った行動に出てしまうんですね。

印象的なのは、父の死をそれぞれ違った形で受け止める3姉妹たちの姿。

歳の離れた長女(16,7歳)は、別の女性と父との間に息子がいたことを知ったり、父の敬愛していた映画監督の作品をシネマテークで観ることによって、父がどんな人間だったのか?理解しようとしていく。

10歳前後の次女が、父親の友人から「お母さんもお姉さんも妹も、君を頼りにしている」と言われ、「自分がしっかりしなきゃ!」と健気に振る舞う姿は愛おしかったです。

父の残した映画会社を何とか守ろうと奔走するも、結局は夢破れてパリを去る家族たち。

車窓からパリの街を眺めている4人の女性の姿で映画は幕を閉じます。

まだ幼い末っ子が「さよなら!パリ!」と無邪気に叫んだ時には、ふいに涙が出ました。

父の自殺という衝撃的な事件は、彼女たちのトラウマとなるに違いない。

でも、前に進むしかない!ということを知っている彼女たちは、強く生きていけるはず…と願わずにはいられませんでした。