さよならモリコーネ!

早速、「ニューシネマパラダイス」のOSTを聴きながら、この文章を書き綴っている。

 

ニューシネマパラダイス」で初めてトルナトーレ監督とモリコーネの音楽を知った中学三年生以来、このコンビの作品は絶対に見逃さないようにしてきたけれど、悲しいかな、これが2人の最後の作品になってしまった。

 

ニューシネマパラダイス」以降の、ドラマティックで抒情的なメロディーしか知らなかったけれど、それは彼の長いキャリアの後半戦でのこと。

映画音楽を始めた頃は、むしろ楽器以外の機材を使って現代音楽風の音を作り上げたり、一躍彼の名を有名にした「荒野の用心棒」に代表される、セルジオ・レオーネ監督のマカロニウエスタンなど、その引き出しの深さは無限大。

 

音楽学校でトランペットを専攻していたのも意外なんだけど、映画の中で彼が楽器を弾いているシーンは非常に少ない。ポロポロとピアノを奏でるくらい。

それもそのはず。モリコーネはピアノを文机にして、五線譜にサラサラと音符を描いていくのだ。それが本当にメモや手紙を書くような手軽さと速さなのだからビックリ!

彼の頭の中ではすべての楽器の音が聴こえ、オーケストラが完璧な調和で鳴り響いているわけだ。過去のクラシック音楽家は皆そうだとは言え、昨今の作曲家たちはPCで簡単に音を重ねたり・・・と試作できる分、恵まれている。

 

映画の台本を読んで仕事を引き受けることにしたり、気に入った作品については「自分一人が作曲するならばやる」と条件を出すなど、彼はただ曲を作るのではなく、本当に映画との親和性、どうやったらこのシーンが、この作品が引き立つか?を常に考えている人だった。

 

小学校の同級生だったレオーネ監督は、「Once upon a time in America」の構想段階から、ずっとモリコーネに話していたという。だから映画を撮る前から音楽作りは始まっていた。そして、この映画の撮影現場では、ずっとBCMとしてモリコーネの曲が流れていた。デ・ニーロは、音楽を聴きながらセリフを喋ってたわけである。驚きのエピソード。

約3時間という、映画としての長尺を使っても、モリコーネの偉大な功績は語りつくせないだろう。

私もできることなら、もっともっとトルナトーレ監督&モリコーネ音楽の映画を観たかった。

「音楽を作る前には、思考が必要。私の目の前にあるのは白い五線紙だけ。さてどうするか?」という老作曲家の問いかけで、映画は終わる。

作曲家のみならず、世のすべての人に問いかけられた質問に、さあ、我々はどう応えるべきか?

トルナトーレ監督が、モリコーネに敬意を表した、何とも粋な演出である。


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