「キングズ」~北アイルランド映画祭~

少し前のことになりますが、「北アイルランド映画祭」に行って来ました。

会場となったユーロスペースは満員御礼の大盛況ぶり。客層は在日のアイルランド人や中高年層、感度の高そうな若者・・・という感じでしたが、改めて日本人ってアイルランド好きなんだ~という事実に驚きました。

で、私が鑑賞したのは日本初公開となる「キングス」。

キングス

夢と希望を抱いてロンドンに出稼ぎに来た6人の若者たち。40年という月日が流れ、仲間の一人が地下鉄のホームに転落して亡くなったという報を受ける。久々に全員が顔を揃えるのですが…。

私はアイルランド共和国にしか行ったことがないので、北アイルランドのことは良く分からないのですが、テロと紛争というイメージしか正直ありませんでした。でも多くの人々がロンドンに働きに来てるんですね。

貧しさゆえにアルコールに溺れる者、ビジネスで成功し仲間と疎遠になる者、家族と共に貧しいながらも地道に人生を生きている者・・・「俺たちはずっと一緒だ」と言っていた同郷の6人は、次第にバラバラになっていく。久しぶりに会ったのが仲間の弔いだったというのが、何とも悲しい。

ロンドン暮らしが人生の大半を占めていても、仲間内ではアイルランド語を話すというルールを頑なに守り続ける男たち。でも、小金持ちになったジョー(だったかな?)だけは、英語を話すんですね。言葉による仲間意識と距離感がうまく出てました。

一旗上げようと国を出た若者たちに、ロンドンと現実はあまりに厳しかった。望郷の念に駆られる彼らが国に帰れる日は来るのでしょうか?北アイルランドに帰ったらまた別の現実に直面しなくてはならない。逃げ場のない彼らの悲壮感がひしひしと伝わってきました。

驚いたのは上映後、監督が登壇してのティーチ・インで、ひとりの日本人中年男性が、完璧なアイルランド語で質問したこと!余りにも流暢でびっくりしました。「僕、アイルランド語は分からないんです。」と監督が告白して、結局男性のアイルランド語は直接通じなかったわけですが、それって沖縄の方言をアメリカ人が完璧に話すってくらいすごいんじゃない?

日本人恐るべし!