「下流の宴」

Book Offに古本を売りに行った時に購入~。

ハードカバーが350円という破格で売られてました。

毎日新聞に連載されていたようですね。

林真理子の何がイイって、ともかくサクサク読める平易な文体。

真実を突く一言や鋭い観察眼が、そこここに見え隠れするんですが、難解なボキャブラリーを使わずに、万人向けに書かれているのがイイ。

だから、いつも定価で彼女の本を買うことを躊躇してしまうんです。

だってすぐに読み終わっちゃうから、勿体ないんだもん~。

この「下流の宴」は分厚いハードカバーだし、多少は読みごたえあるだろう~っと思ったんですが、今までの最高スピートレベルで読み終わっちゃったいました(涙)。

内容は、「自分の亡くなった父親が医師だった」ことだけを支えとして、息子にも上流を目指させようと教育を施してきた中年女性が、何事にもやる気のない息子にイライラ。

親の期待とは裏腹に息子が高校も中退し、漫画喫茶でバイトし、おまけに沖縄の離島出身の高卒女子と同棲しているという現実に対応できない彼女。

結婚の許しを得るために挨拶に来た息子の彼女、珠緒から「そんなに医者が偉いんですか?だったら私が医者になったら息子さんを結婚してくれるんですね!?」とタンカを切られます。

「お!?この話、そう来るのか?」と。

途中から珠緒の受験奮闘記になるんですよ。

2年間の猛勉強の末、何と!珠緒は見事に国立大学医学部に合格しちゃうんです。

要するに、愛する息子と「品も学歴もない離島の娘」を別れさせようと彼女の放った一言が、珠緒を奮起させ、自分があんなに見下していた女の子を刺激し、息子ではなく、彼女に医者としての道を歩ませてしまう…と。

果たして息子はどうか?というと、「俺って頑張る女性って苦手なんだよね~。もう珠緒には付いていけないよ~」と2人は別れてしまうと。

なんという皮肉な結末。

まあ、人間は「頑張ることが出来る人」と「奮起出来ない人」の2種に分かれるんだろうなってことを感じましたね。

今の日本の若者は圧倒的に後者が多いんでしょう。

「頑張るってめんどくさいよ~」みたいな。

で、本の感想としては、「林真理子、筆力落ちたなあ」って思いました。

若い頃は「おお~、すごいな、良く見てんな~」という、こちらがドキッとするような描写もありましたが、全然普通の小説で終わっていた。彼女らしさがなくなっていたなあ。

自分がもうセレブになっちゃったので、市井の目線が消えちゃったんでしょうね。

「ルンルンを買っておうちに帰ろう」とかは、まだ駆け出しコピーラーターだった頃の自分の体験が反映されていたんでしょうね。

やっぱり漫画家とか作家って、一般の人々とどこまで感性を共有できるか?が重要だと思うから。

林真理子、「anan」の「美女入門」書いてる方が良いんだろうな…。

何食べたとか、どこ行ったとか、何買ったとか。

未だにバブルを引きずっている、ただのダイエットおばさん作家になってきている気がする…。