「小さな村の小さなダンサー」★★★☆☆

これが実話だっていうのだから驚きです!

小さな村の

中国出身のバレエダンサー、リー・ツンシンの激動の半生を綴った自伝『毛沢東のバレエダンサー』を映画化した感動のドラマ。

山東省の小さな村に住んでいた少年ツンシンは、その身体能力を認められて、ある日突然、北京の舞踊学校に連れて行かれます。毛沢東夫人の江青女史が推し進めていた文化政策の一環で、バレエダンサーを育成するというのが国のミッションだったんですね。

しかし、文化政策でいきなりバレエとは…(汗)。

まあ同じ社会主義国ソ連を見習ったのかも知れませんが、およそ西欧文化とは程遠い山東省の村にまで才能発掘のために役人が来ちゃうっていうのが、あり得ないんですけど。

毛沢東&革命軍の言うことは絶対!」という時代ですからね~。ちょっと余計な口を滑らせただけで、下放されてしまうという恐ろしい暗黒時代。

上の写真でツンシンにバレエを教えている先生も、江青の主張する「革命を表現したバレエ」に反論したせいで、ある日突然、学校を去ります。ツンシンにバリシニコフの踊るドン・キホーテのビデオを託して…。この踊りを見たことで、ツンシンの気持ちに変化が訪れるのです。

ルドルフ・ヌレエフグルジアの貧しい家に生まれ、バレエを始めたのも10代になってから…という遅いスタートでしたが、世界の片隅にも才能の芽はあるもんなんですね。

ソ連から亡命したという点に置いても、ヌレエフとツンシンの共通点を感じます。

アメリカでの3カ月の研修を終えた後、国際結婚によるグリーンカード取得を目論むツンシン、そして彼を中国に戻そうと画策する中国政府との攻防には、手に汗握りました。

わずか2時間弱の映画に彼の半生を押し込むのは不可能で、相当に簡略化された部分が多かったのが残念でしたが、実際のダンサーが演じるバレエシーンは圧巻でした。

特にラストの「春の祭典」の迫力たるや凄まじく、またこのシーンには嬉しいサプライズも用意されているんですが、ツンシンと家族の歩んできた長く辛い時間に思いを馳せてしまい、Forest、またもや号泣でした。

ちなみにツンシン氏は現在、アメリカ人バレエダンサーの妻と結婚し、3人の子供と共にオーストラリア在住だとか。

主演のツァオ・チーを始め、世界で活躍している同胞たちの姿は隔世の感でしょうね。

彼らにもツンシンのような先人達の存在を忘れないでいて欲しいものです。