「1978年、冬」

1978年---中国では毛沢東周恩来の死にともない10年に及んだ文化大革命が終焉し、小平の路線が確立し始めた年。

1978年

中国北部の小さな町、西幹道に住む兄弟と、北京からやってきた少女シュエン(雪雁)。原題は「西幹道」ですが、これじゃあピンと来ない。毎年訪れる冬という季節、でも3人にとっての忘れられない「1978年の冬」。そのニュアンスを見事に現した、絶妙なタイトルです。

長かった文革時代が終わり、自由と希望の光が見え始めた。とは言え、北京から遠く離れた田舎町に住む人々は、まだまだ過去から決別できず、先の見えないぼんやりとした不安を抱いている。凍てつく冬の景色の中で、その過渡期が映し出されます。

セリフも少なく、本当に淡々とした物語ながら、「無口な父、口うるさいけど本当は優しい母、兄弟の初恋、都会からきた少女への憧れ、友情、そして愛するものの死」という、およそ全ての要素が網羅されており、観終わった後にじんわりと感動が押し寄せる、そんな佳作です。

特に11歳の弟を演じた少年。映画初出演だそうですが、人の気を逸らさないキャラクターで目が釘付けでした。とにかく身体を張って、母親からの叱責や、同級生からのイジメに対抗するという逞しさ。この弟と対照的に、何をやっても裏目に出てしまう(怒りを買ってしまう)兄。やはり弟は世渡り上手ということでしょうか?