マラーホフ in 「チャイコフスキー」
知人にご招待頂いて、ベルリン国立バレエ団の「チャイコフスキー」を観てきました!
天井桟敷が定席のForestにとっては、初めての東京文化会館S席!いやあ~、オペラグラスが不要なくらいのナイスビューを体験しました。最初で最後かも^^;と思うと、その全てを細い目に焼き付けるべく、全神経を集中致しました!
予告編はこちらで楽しめます!
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-293.html
ロシアの振り付け家ボリス・エイフマンによる本作は、音楽家としての才能と栄誉に恵まれながらも、同性愛者としてのアイデンティティに苦悩し、孤独に苛まれる人間チャイコフスキーの心理に迫るドラマティックバレエ。
一度、DVDで観たことがあったのですが、その時もマラーホフの「踊る俳優」とも言うべき、演技っぷりに脱帽。
迫力に圧倒されましたが、それがリアルな舞台となったら尚更。
チャイコ好きのForestにとっては、名曲の数々がフルオーケストラで堪能できるのも魅力の一つ。
それにしてもチャイコの曲って、どうしてこうも情緒的なのでしょうか???
まるで日本人のために作曲されたかのようなリリカルで繊細な旋律。
こうしたロシアの音楽家やバレエダンサーに憧れて、ロシア語を専攻しようと決めた高校三年時の思いが蘇ってきましたね。全く違う道に進んでしまったわけですが、やはりロシアはForestにとっていつでも気になる、そして尊敬すべき才能を次々に輩出する素晴らしい国です。
マラーホフ、その中性的な容姿と、繊細な感情表現を伴った踊りで、日本でも圧倒的な人気を誇るダンサー。
実はForest、2003年の冬、イギリス留学中に、ヨーロッパの劇場を巡り、バレエ&オペラ&クラシックコンサート目当ての一人ツアーに出たことがあります。事前に目当ての劇場の公演スケジュールを調べ、学生チケットのみでの鑑賞、宿はユースのみと決めての貧乏旅行~。
ヨーロッパでは殆どのオペラハウスで学生割引があり、世界一流のパフォーマンスを1000円以下の安値で楽しむことが出来ます。特に忘れられないのは、チェコで諏訪内晶子氏のバイオリンコンチェルト with チェコフィルを観た時ですが、何と学生席は100円だった!
話は逸れましたが、その一人ツアーの際、ベルリン国立歌劇場にも当然、立ち寄りました。
不覚にも学生証を忘れてしまったForest。
一般席は70ユーロ弱(それでも十分安いけど^^:)学生の身分には過ぎた席…と、諦めかけたその時に、日本語で声をかけられたのです。「お一人ですか?」と。
Forestは知らなかったのですが、その日の踊り手はマラーホフ。(ちなみに公演は「オネーギン」でした)
声をかけて下さった男性は、自身もダンサーでマラちゃんの大ファン。
一緒に日本からいらっしゃったご友人が仕事で帰国を余儀なくされたとかで、なんと!余ったS席をForestに譲って下さるとのお申し出!とっさに返事が出来ないほど、ビックリしましたね。
本当に夢のような出来事で…。今でも、あの時に感じた冬のベルリンの冷気と、その突き刺すような外気とは裏腹な幸運に恵まれた興奮で上気していたことを、ハッキリと覚えています。
終演後に、ご一緒に楽屋口にもお邪魔させて頂き、何とマラちゃんとの2ショットも撮ったことのあるForest。
そんな事情もあって、彼は忘れられないダンサーなんです。
…と、余談が長くなりましたが、42歳のマラちゃん。
彼の「チャイコフスキー」を観るのは最後かも…と思うと、かつての思い出とチャイコの音楽と、マラちゃんの素晴らしい踊りが胸に迫り、1幕で涙、涙でした。
知らない内に、ツ~っと涙が頬を伝っていました。
神様は、わずか一握りの人に、かくも素晴らしい才能を与えるんですね~。
その天賦の才能を活かして、遠く日本の観客を魅了し続けるマラーホフを心から尊敬します。
ともかく、この演目はチャイコフスキーに成りきらないと演じられないんです。
彼の生きた時代背景、音楽、人生…全てについて精通していいないとダメ。
だからやっぱりロシア人ダンサーに踊ってほしいとForestは思ってしまう。
マラちゃんはチャイコが憑依したのでは?と思うくらいの、成り切りぶりでした。
踊りでここまで人の心を揺さぶることのできるマラちゃん。
何度もカーテンコールに応えるマラちゃんの表情。
まだチャイコから抜けきってない様子でしたね。素晴らしき踊り手、そして俳優!
彼の踊りをきちんと評価している日本人観客の鑑識眼の高さにも驚かされます。
ここまで他国の文化(=バレエ)を正当に評価し、思い入れ、熱狂的に応援することのできる日本人って、世界に誇れる観客だと思います。こんなに寛容で、美意識の高い国民は他にはないでしょう。