「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」

世界的女流写真家アニー・リーボヴィッツの人生を辿るドキュメンタリー。監督は彼女の実の妹バーバラ・リーボヴィッツ。彼女の名前は知らなくても、ジョンとヨーコのポートレイトやデミ・ムーアの妊婦ヌードなど、センセーショナルな作品は誰もが目にしたことのあるものばかり。

アニー・リーボヴィッツ

ローリング・ストーンズのツアーに同行したエピソードは圧巻でした。世界最高のバンドと行動を共にしたら贅沢三昧と麻薬で精神と身体をダメにする。行くな!と誰もがアニーを止める。でも彼女は行く・・・。その結果、ドラッグを絶つためのリハビリ施設に入る。彼女の撮ったストーンズの写真を見れば、そりゃもうどれほどメチャメチャで享楽的な生活をしていたか分かりますよ。ベッドの上、ホテルの廊下、スタジオ・・・ありとあらゆる所でだらしなく潰れている姿ばかり。女だてらに彼らと生活を共にして、あらゆる瞬間を切り取ったアニー。その根性は見上げたものです。(キャメロン・クロウ監督の自伝的映画「あの頃、ペニー・レインと」を思い出しました。)

ローリングストーン」誌の表紙を飾る人物写真を撮っていたアニーですが、その後「ヴァニティ・フェア」誌に移り、構図やコンセプト、写真が放つメッセージ性にまでこだわるようになっていきます。ヴェルサイユ宮殿マリー・アントワネットに扮したキルストン・ダンスト、ブラスバンドをバックに撮影するキーラ・ナイトレイ、下着姿の美女に囲まれて、まるでミケランジェロの絵のような構図に納まるジョージ・クルーニー。確かに素晴らしい写真なんだけれど、ここまでやらなくてはいけない理由って何?と途中から疑問が浮かんでしまいました。この1枚を撮るのにどれほどの労力とお金がかかってるのかな?と。

ヴァニティ・フェア誌の編集者がインタビューで語っていました。「今日は飛行機、明日は馬、アニーの要求が多すぎて大変」と。何となくアニーは、以前のシンプルだけどメッセージ性のある写真たち(デミ・ムーアの妊婦ヌードとか、バラの上で眠るベッド・ミドラーなど)を忘れて、今は形式に拘ってしまってるのかな~と思いました。馬や飛行機がなくても、その人物のコアな部分を引き出すことには長けてるはずなのにね。

人間って歳とってお金も出来ると、どんどん我ままになっていくのかな。

50歳を過ぎて子供を産んだのには驚きましたね。(ちなみに彼女はレズビアン。映画中で子供の父親については一切触れられていないのが、残念でした。)

仕事も名声もお金も、そして子供も手に入れた羨ましい女性です。もちろんそれだけの努力をしてきたのでしょうね。人生甘くはありません。