「未来を生きる君たちへ」★★★★☆
デンマークの女流監督スサンネ・ピアによる今年のアカデミー外国語映画賞受賞作。
彼女の「悲しみが乾くまで」が結構好きだったので、少なからず期待していたのですが、淡々と静かに、でも人間の内面を描き出す手法は健在で、やっぱり観て良かった!と思える佳作でした。
こういう映画に当たった日は、何とも嬉しいもんです。
それぞれに問題を抱えた2組の家族。小学生の息子達は学校での執拗ないじめに対して、過激な報復をする。
一方、アフリカの難民キャンプで働く医師の父の元には、悪名高い妊婦殺しの“ビッグマン”が運ばれてくる…。
暴力とそれに対しての報復。
繰り返してしまえば、終わりのない悪の連鎖が待っている。
人間はどうやったら自分に悪を働いた人間を赦すことができるのか?
すごく深いテーマです。
しかし、自分が相手を赦すこと=暴力への報復をせず、次々に生まれる悪の連鎖を断ち切ることができるんだと身をもって息子に示す父親の姿には感動します。
スサンネ・ピアの作品に共通しているのは、心に傷を負った人々が、劇的な手法ではなく、淡々と地道に日常を送る中で、癒され、未来への希望の光を見出すということ。
人が再生するきっかけは、案外と身近にいる家族や友人、そして自分の心の中にこそあるのだということを、改めて教えてくれます。
ドラマティックなことは何も起こらない。
でも、誰の人生もドラマなんだということを教えてくれるような作品です。