「ヤコブへの手紙」★★★★★
フィンランドからやってきた珠玉の名作。
セリフ、尺、登場人物、音楽…を必要最低限に削ぎ落とし、徹底してミニマルな作りを貫いている。
しかし、わずか75分の中に、人生、生きる意味が凝縮されています。
罪を犯し、終身刑に処せられていたレイラは恩赦を受け、盲目のヤコブ神父の元に身を寄せることになります。
仕事は神父宛てに届く手紙を読み、代筆をすること。
しかし、このレイラが荒んでいるというか、可愛げがないというか…。
神父にも全く心を開かないばかりか、届いていた手紙の一部を捨ててしまう始末。
「こんなに善人な神父に、ひどい仕打ちだ~」と思うこと度々。
しかし、ある日ぱったりと神父の生きがいでもあった手紙が届かなくなります。
「もう自分は必要とされない人間なのか?神のもとに行くべきなのか?」と思い悩む神父。
そんな彼の姿を見て、レイラはある行動に出ます…。
あ~、泣いた、泣いた。
最初はふてぶてしいレイラに全く感情移入できなかったんですが、彼女の犯した罪、そして神父が彼女に与えた赦しを知った時には、涙がとどめもなく溢れましたね。
周りにもすすり泣いている方が何人もいらっしゃいました。
登場人物は、神父とレイラ、そして郵便配達人のおじさんという3人だけ。
この配達人のおじさんの感覚が普通で、また良いんだなあ。
こういう普通の価値観を持ってる人が映画に登場すると、ホッと安心しますよね。
事件を起こして終身刑だったレイラが神父の元に住み込んでいることを心配するおじさん。
彼女が玄関に立っていると、恐れをなして引き返してしまったり。
でも、普通の人の反応ってこうだと思うんだよね。
レイラが神父に悪さをしていないか?確かめるために家に忍び込んだり。
かれは典型的な俗人のメタファーだったと思う。
ネタばれになるから詳しくは書けませんが、最後に配達人が帽子を取って神父に頭を下げるシーン。
ここも泣けた…。
信仰と赦しを見事に描いた傑作です。
こういう映画がもっと評価されて、大ヒットしてほしいな~。
まだ2011年2月ですが、取りあえずは今年のベスト1に決定!
昨年の「瞳の中の秘密」(アルゼンチン)と言い、珠玉の名作は、あまり馴染みのない国から突然に出現することが多いですね。
フィンランド映画、素晴らしい~!