「愛する人」★★★★☆
何度か予告編は観ていたけど、実際に映画館で観る予定はなかったんですよね。
でも、ネットでのレビューと評価がかなり良くって、行ってみることに。
14歳で生んだ娘を養子に出した母親とぎくしゃくした関係を続けながら、いつも娘のことが心から離れないカレン(アネット・ベニング)。
そして、37年間ずっと実母を知らず、他人に深く関わることなく孤独に生きてきた弁護士のエリザベス(ナオミ・ワッツ)。
カレンもエリザベスも、孤独を抱えているが故に、決して一筋縄ではいかない厄介な女性達です。
カレンは男性から好意を寄せられても素直に受け取れず、逆に苛立たせるようなことばかり言ってしまう。
疑り深いし、ホントに気難しい50女って感じで、彼女と結婚するパコが、とっても優しくって良い男性に見えます。実際、結婚してパコの愛情に包まれるようになってから、カレンの表情が激変するのは見もの。
アネット・ベニング、昔「心の旅」とか「グリフターズ~詐欺師たち」とか出ていた頃は30前半で、とっても綺麗だったけど、本作では見事にカラカラに乾いた感じの50代女性を演じていて、圧巻でした。
娘役のナオミ・ワッツ。
彼女はいつ見ても綺麗ですね~。
本作でも有能な弁護士という役柄なので、とてもシックでセンスのよいモノトーンのスーツやドレスをさりげなく着こなしているシーンが多いのですが、彼女の金髪碧眼という「ザ・白人」的容姿が、その服装にとってもマッチして、ひんやりと冷たい美しさを醸し出しているんですよね。
しかし、ナオミ・ワッツ演じるエリザベスもまた問題のある女性で…。
上司で父親ほども歳の離れたサミュエル・L・ジャクソンとも即効寝るし、隣の家のご主人とも(しかも奥さんは妊娠中)いつの間にか関係を持ってて。自分の下着をわざと奥さんのタンスに忍ばせたり、満たされない故に奇異な行動に走っちゃう可哀相な女性って感じです。
でも、妊娠を機に彼女は変わるんですね。
母性に目覚め、シングルマザーになると覚悟を決めるんです。
そこで初めて実の母親に会いたいと手紙を書くのですが…ここからはネタばれになるから伏せるのですが、運命って皮肉だなあと。
でも命は繋がっていくというか、母は偉大というか。
自分の母親のことを思い出したりしながら映画を観ていました。
原題は「Mother and Child」。
その通りの映画です。
セリフも音楽も少なく、非常に静かな淡々とした映画ではありましたが、その分、ひたひたと押し寄せてくるような感動がありました。
世の母親たち、必見。