「冬の小鳥」★★★☆☆

自身も養子としてフランスに渡ったウニー・ルコント監督のデビュー作。

韓国ドラマを見ていると良く出てくるのが、「養子として海外で育った人物が、実の両親を捜すために韓国へ戻ってくる」という設定。

海外移民、そして養子縁組には縁のない日本人にはピンと来ないかも知れませんが、韓国人にとっては今でも身近なことなんですよね。

まあ、だからこそ世界各国に「韓国系○○人」が存在しているんですけど。

9歳でカトリック系の養護施設に預けられたジニは、父親がいつか迎えに来ると信じ、環境になじもうとしません。

しかし、彼女も心を許せる友達に出会い、施設での生活が自分の一部となり、やがて養父母に出会います。

わずか9歳にして自分の置かれた環境を受け入れ、やがて悲しみを乗り越えて、新しい人生に向かい合おうとする彼女の姿は非常に逞しい。

ジニを演じたキム・セロンちゃんが圧巻の演技を見せます。

まさに天性の女優とでも申しましょうか?

過酷な運命に必死に抵抗するものの、次第に順応していく…少女の揺れ動く感情を見事に体現しています。

日本にも名子役と言われる役者はいますが、韓国の子役は更に上を行ってる気がしますね。

時に見せる彼女の大人びた表情がなんとも言えません。

ウォンビンと共演し、韓国でも大ヒットとなった映画「アジョシ」でも存在感たっぷりの彼女。

今後、大注目の小さな名女優です。

ジニは施設で瀕死の小鳥を見つけ、何とか生き延びさせようとします。

小さな命の火を消すまいとする必死になるジニと友人。

彼女らの努力も虚しく、やがて小鳥は息絶えます。

呆気ない小鳥の死を目の当たりにした時から、ジニは自分の運命に抗うことなく、しかし屈することなく生きていくことを決意したような気がします。

きっと彼女と同じような子供時代を送ったであろうウニー・ルコント監督。

フランスでの生活で韓国語を失っていたそうですが、フランス・韓国の合作である本作で見事に両国をつなぐ役割を果たしましたね。何と劇的な人生でしょうか?

こういうドラマチックなエピソードがきっと韓国にはゴロゴロしてるんでしょうね。

日本人が韓国ドラマに夢中になるはずです。

だって、それは韓国の人々にとってはフィクションではなく、リアルなんですから。