「ウッディ・アレンの夢と犯罪」★★★☆☆
日本人はやはり「ウッディ・アレン」ブランドには弱いのか?
彼の映画には、内容・原題に関係なく彼の名前が冠された邦題が良く付けられますね。
本作も原題は「カッサンドラの夢」。主役の兄弟が買った小さなヨットの名前です。
生まれ育ったNYを離れ、最近は専らヨーロッパにロケ地を移しているウッディ。
「マッチ・ポイント」「タロットカード殺人事件」に続くロンドン三部作のトリを飾る作品です。
とは言え、内容的には「マッチ・ポイント」と表裏をなすもの。
ふとした出来心から殺人に手を染めてしまった愚かな兄弟の末路は、「マッチ・ポイント」の真逆をいきます。
全く似ていない兄弟を演じたユアン・マクレガーはスコットランド人、コリン・ファレルはアイルランド人。
外見は別人にしか見えない二人ですが、兄弟の正反対の性格を反映しているようで気になりませんでした。
そしてさすがにイギリス英語を見事に操ってましたね。
彼らはハリウッド映画にも出てますが、こうしてロンドンを舞台にした作品ではやはりヨーロッパ人にしか見えません。懐かしいロンドンの街並みも存分に楽しめました。
ただストーリーとしては「マッチ・ポイント」の方が好きだな~。
こちらは何の捻りもありません。まあ、ウッディ・アレンの映画は基本的にコメディなので、本作もブラック・コメディとして見るとかなりの秀作なのかも知れませんが。
ハリウッドとは距離を置きながらも、熱狂的なファンを世界中に持ち、独自の感性でコンスタントに秀作を放ってきた御大も今年75歳…。脚本・監督を共にこなす高齢監督という点では、日本の誇る新藤兼人に匹敵するかも。90代の新藤監督にしたらウッディもまだまだ若者なんでしょうけどね。
やっぱりウッディの前にウッディなし、ウッディの後にウッディなし…と思います。
個人的には「アニー・ホール」(77年)「マンハッタン」(79年)と「インテリア」(78年)が好き。
この頃が、彼の全盛期だったかも知れません。