「東京ソナタ」

「CURE(キュア)」を観たときは、1週間くらいそのショックを引きずり、あらゆる人にこの映画の恐ろしさを語っていたものです。それ以来、黒沢清監督は私にとって、一番気になる日本人監督になりました。彼が登場するティーチインに足繁く通ったりもしたっけ。懐かしいなあ、あの日々が。まだ映画の仕事もしておらず、私にとって映画はまだ夢の存在だった・・・。

と、懐古はここまでにしておいて。以前から追っかけていた黒沢監督がついにカンヌの「ある視点部門」で受賞・・・というニュースを聞き、「ホントに世界の黒沢になってしまったのね」という一抹の寂しさも感じつつ、受賞作の「トウキョウソナタ」には期待大だったわけ。

トウキョウソナタ

中盤までは結構良かったです。でも役所広司が出てきてから、何だか物語が違う方向へ走り出してしまった気がする。彼の演技が悪いわけではないのですが、役そのものが不要だったなあ。

それから小泉今日子。どうして監督は彼女をキャスティングしたのだろうか?きょんきょんのお陰で全然映画に入り込めなかった。正直言って。彼女が言葉を発する度、動く度に「え?!なんでそうなるの?」という疑問の連続。まあ、演技力がないのは仕方ないにしても、全然はまってないんですよ、この映画に。感情を抑えた演技ということで監督に要求されたんだろうけど、それにしてもなあ。

リストラされたことを家族に言えず、毎日出勤してるかのように装う父。香川照之はさすがの演技です。彼が一番リアリティある存在だった。

コンセプトは良かったんだけど、まだまだ改善の余地あり・・・というか未完の映画でしたね。 「CURE」の衝撃には遠く及ばず。でも、黒沢監督には今後も期待し続けますよ~。大好きな監督さんには変わりないですもん。