「シアトリカル」★★★★☆

先日、このブログにも書いたように、唐十郎の舞台を初体験した。

奇しくも彼と唐組の劇団員たちが、新作の上演に至るまでを追ったドキュメンタリー映画が公開されているとあって、早速鑑賞。


日曜午後の回だったけれど、年配のグループ、一人で来ている若者など、幅広い年齢層の客で8割程度の席が埋まっていたのには驚き。

さて、まだ唐組舞台の記憶が生々しい私には、演じていた役者さんたちの顔に見覚えがあり、カメラが密着する彼らの私生活の困窮ぶりを人ごとでなく心配してしまった。

いくら好きなことをしているからと言ってもなあ。

ベテラン役者たちは、20年前後も唐組に所属している。

そんなに長い間、あの偏執狂(=唐十郎)に付き合ってきたとは・・・。

私には絶対できない!1日でも辛いだろうなあ。

ともかく唐十郎という人は、自分で多重人格と言うだけあって、さっきまでニコニコ笑っていたかと思うと、急に真顔でキレることの繰り返し。

でも、周りでうなだれている役者たちが何だか、唐を主役に据えた舞台の出演者のように見えるんだな。

生活の全てを演劇に捧げている故に、彼らの素顔すら「シアトリカル」になってしまってるのだろうか?

普通の人があれをやっても誰もついて来ないだろうけど、不世出の天才・唐十郎だからこそ20年も振り回されたっていいや・・・という奇特な人たちがいるんだろう。

それにしても憎めない人だなあ。唐十郎って。

怒ってても、すぐに「ごめんね。言い過ぎた。」ってヘラヘラ言われてると、こっちは笑うしかないよなあ。

67歳にもなって泉のように湧き出るアイディア、40も年下の劇団員たちを凌駕するバイタリティには「参りました!」と言うほかない。