「ノートに眠った願いごと」★★★★☆
ユ・ジテの舞台挨拶があるというので、シネマート六本木へ。
私の中では「オールドボーイ」の悪役というイメージが強いんですが、実物の彼は肩幅が異様に広く、でも足が細い。マシュマロマンみたいな体形でした。
でも、スマイリーで優しそうな人でしたね。
で、肝心の映画ですが。
これまた全く期待しないで、かつほぼ徹夜明けの状態で観たので、途中眠りこむだろうと思っていたのですが、ところがドッコイ!
映画にグングンと引き込まれ、最後には落涙ですよ。
我ながらビックリ。
物語は1995年に韓国で実際に起きた「三豊デパート崩壊事故」により婚約者を亡くし、それから10年間、自分を責め続け、もぬけの殻のように生きてきた男が、彼女の残したノートに従って旅をする…というお話。
デパート崩壊までの店内の様子(空調が効かずに、やけに暑がる人々)や、崩壊の瞬間などがリアルに再現されてるのですが、あれだけデカイ建物が目のまで崩れ落ちるって、すごいことです。
あんな事故が本当に起きたとは…。恐るべし韓国!
この映画の原題は「秋へ」なのですが、正にタイトル通りユ・ジテ演じるヒョヌは、美しい韓国の秋の風景を辿る旅に出ます。
映像がとっても綺麗なんですね、この映画。
韓国にもこんなに紅葉の綺麗な場所があるんだ~とホレボレ。
旅を通じてヒョヌは、初めて彼女の死と向き合い、一人でデパートに行かせてしまったという罪悪感を吐露するのです。
そして旅の最後、彼は婚約者の両親の元を訪ねます。
その時の義父が言うのです、「もう楽にしなさい。」と。
泣きましたね~。このシーンで。
一人娘を亡くした無念を抱いた両親とヒョヌは、10年間というもの彼女の死に捕われて生きていた。
でも「もう君も楽にしていいんだよ。」というこの言葉で、ヒョヌは次の一歩を踏み出す勇気と決心を持てたのですね。
旅の途中、行く先々で出会う謎の女性。
彼女の存在が、映画を更に深みのあるものにしています。
ラストシーン。紅葉に彩られた並木道を距離を保ちながら歩くヒョヌと、旅で出会った彼女の後ろ姿が、静かな余韻を残す。
近年の韓国映画の中では、かなりの秀作です。