「パンズ・ラビリンス」★★★☆☆

ポスターだけ見ていると「不思議の国のアリス」もどきのファンタジーかと思いますが、ところがどっこい!

フランコ時代のファシズムの嵐吹き荒れるスペインを舞台にした、暗くて悲しいお話なのでした。

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ネット上での評価がかなり高く、口コミ効果もあってか、上映館の恵比寿ガーデンシネマは土日ほぼ満席の大盛況だとか。

ファンタジーはあまり好みじゃないのですが、この映画はスペインの歴史的背景と人間の内面(弱さと残虐さ、そしてそれに屈しない正義感)を暴き出すことによって、単なるファンタジーに留まらない奥行きを持っています。

現実世界では冷徹で残虐な大尉に脅かされ、ラビリンスではパン(牧神)に3つの難題を突きつけられる。主人公のオフェリアには心休まる暇がありません。私が彼女だったら、とても生きていけないほどの辛い世界が常に彼女を取り囲んでいるのです。

個人的には大尉に仕えながらも、反乱軍の援助をしている医者が印象に残りました。彼が大尉に放つセリフ(ちょっと忘れちゃったんですが)「何も思わなければ、生きてる意味がない」というような意味合いだったかと思いますが、大尉に殺されることを承知で言ってるんですね。

その直後に後ろから撃たれるわけですが、彼が死ぬシーンは本当に辛かった。

唯一ここで泣きました。

正しいことをしても殺されしまうなんて…。

生きている時代が人間の人生を大きく翻弄してしまうことの理不尽さを、痛いほど感じました。