「肉体の悪魔」!

20歳という若さで亡くなった天才小説家ラゲィゲ、18歳のデビュー作。

恐ろしいまでの才能ですね。

こんなにも筆力のある文章を読むのは久しぶりで、昂揚感を覚えました。

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15歳の少年が19歳の人妻と堂々と不倫する・・・という彼の実体験に基づいた恋愛小説なのですが、甘ったるさとは無縁。

主人公の少年が世の中を斜めに見る、ニヒリスティックな視線が冴え渡ります。

気に入った一節を。

「彼らには手の届かないように見えることが、僕にはありのままの現実に見えた。

猫がガラスケースごしに見ているチーズのようなものだ。だが、チーズは見えているが、ガラスの壁も存在している。

ガラスが割れれば、猫はその隙につけいってチーズをいただくだろう。

たとえ、自分の飼い主がガラスを割り、指を切って苦しんでいたとしても。」

冒頭でこの文章を読んだ時は嘆息しました。

コクトーが同性愛の噂を立てられるほど、ラディゲに傾倒したのも分かる気がするなあ。

20年という短い生涯に、2作品しか残してくれなかったのは非情に残念です。