「長江哀歌」★★★☆☆

2006年のベネチアでグランプリ!という宣伝文句に惹かれて観てきました。

実は監督のジャ・ジャンクーは、10年ほど前の映画関係のレクチャーのゲストで来た時にかなり至近距離で話を聞いたことがあり。

当時は何の予備知識もなく、彼本人を見ても「小さい青年だなあ」くらいの感想しか持たず…。

その後、数々の映画祭で受賞し、世界の「ジャ・ジャンクー」となったのはご存知の通り。くぅ~、サインの一つでも貰っておけばよかった~。

さて映画ですが。

ジャ・ジャンクー作品にしては結構セリフもあるし、気が遠くなるほどの長尺でもないし、結構分かりやすい。

舞台は中国の一大国家プロジェクトである三峡ダムの建設で、二千年の歴史がある地でありながら、水中に沈む運命の古都・奉節。

でも住人たちは特に感傷的にもならず、淡々と毎日の生活を営んでいます。

本作は中国語原題を「三峡好人(三峡の善人)」、英語題を「STILL LIFE(静物)」といいます。

「長江哀歌」もなかなか良いタイルだけど、原題・英語題ともに言い得て妙なものがあります。

映画に描かれる正に水墨画のような風景。それとは対照的に地を這うように生きてる川沿いの人々の暮らし。

街が何千年の歴史を持っていようが、自分達が毎日ご飯を食べられるか?ってことが彼らにとっては重要なんでしょうね。

中国の人って本当に逞しいなあ。

私の親友である中国人は、三峡下りの出発点である重慶の出身。

夕日を見て漢詩をそらんじるようなロマンティックかつインテリが、三峡の景色を絶賛していたのを思い出しました。

彼女と一緒に映画の風景を見たくなりました。