「The way we were~追憶」で号泣 ★★★★☆

鎌倉の川喜多映画記念館では、1月から「崩壊と覚醒の70年代アメリカ映画」という特集上映が続いています。

スクリーンで70年代の名作を鑑賞できる機会は超貴重。

というわけで、最近の週末は専ら川喜多詣でをしております。

 

本日の一本は1973年公開の「追憶 (The Way We Were)」。

 

30年くらい前にビデオで観たのですが、大まかなストーリーしか覚えておらず(汗)。

この映画をもう一度観たいと思った理由の一つは、Forestのオールタイムフェイバリットドラマ「Sex and the City」で、主人公の3人が大好きな映画として挙げられるから。そのシーンはこちら。


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ヒロインのキャリーが腐れ縁で付き合ってきたプレイボーイ、Mr. Bigが、キャリーよりずっと若い女性と3度目の結婚をする。

「どうして彼女なの?」とバーで仲間に問いかけるキャリーに、ミランダは「答えはたった一つ、ハベル(「追憶」の主役ロバート・レッドフォードの役名)よ」と告げる。

 

「そう!その通りよ!ハベルよ!」と盛り上がるキャリーと仲間たち(除くサマンサ)。みんながこの映画大好きなのです。そして、あまりにも有名なテーマソング「The Way We Were」をバーで大合唱する3人。

 

詳細忘れていたゆえ、「これは、何が”ハベル”なのか?」を知る良いチャンス!とばかりに、川喜多へGoしたわけです。

 

結果・・・もう途中から、嗚咽に近い号泣で、ハンカチが手放せませんでした。

「こいつ、なんでこんな泣いてるんだ?」と、隣の席の人に怪しまれていたかも。。。

 

あらすじはこんな感じ。

学生運動の女闘士と金持ちのエリート青年、育った環境も信条も全く違う2人だが、惹かれあい結婚する。しかし「赤狩り」の時代が到来し、映画の脚本家としての道を歩もうとしていた彼の身にも暗い影を落とし始める。。。

誰もが恋愛やスポーツにうつつを抜かしている平和なキャンパスで、一人政治運動に意欲を燃やすケイティ(バーバラ・ストライサンド)。アルバイトを掛け持ちしている苦学生の彼女はしゃれっ気もなく、ちりちりのカーリーヘアーがトレードマーク。

声高に理想主義を叫ぶ彼女は大学でも浮いた存在で、同級生からは冷ややかに見られているのですが、「周りからどう思われようと関係ない!自分の主張は曲げない!」という姿が実にカッコいい。

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これが、ちりちりカーリーヘア!

一方、ブルジョワ出身のハベル(ロバート・レッドフォード)は金髪碧眼の絵に描いたようなWASPの若者で運動神経も抜群。周りにはいつも美女を侍らせ、安易な(=Easy。この単語、映画の中で多用されます。)大学生活を謳歌しているお坊ちゃま。

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Wって、Wasedaじゃないよ!

水と油のような2人ですが、共に履修していた「短編小説」の授業で、ハベルの書いた小説が最優秀作品に選ばれ、小説家志望だったケイティは、密かに彼の才能を認めている。

学生時代は交わることのなかった2人の道が、第二次大戦中の再会によって交差し、何回かの危機を経て、結婚にまで至るわけです。

自己主張が強く決して折れないタイプのケイティは、ハベルのブルジョワ仲間たちにもすぐにケンカを吹っかけてしまい、うまく付き合うことができない。こんな彼女がいたら、ハベルも頭痛いわな。。。

どこでそんなに泣いちゃったのさ?というと、まずは、ハベルの仲間たちが学生時代の8ミリ映像をみんなで観ているシーン。いつもながらの演説をぶっているケイティが映し出されます。ケイティが軽薄だと毛嫌いしている、ハベルの親友JJが「ケイティは本当に演説が上手だった。She was so bestutiful.」って言ってるシーン。

彼らはケイティをバカにしてはなかった。むしろ、周りに迎合することなく、しっかりとしたポリシーを大人数の前で主張できる彼女が羨ましかった。

先に妻と離婚することになったJJは、ケイティとうまくいっていないハベルに「(自分の離婚なんて)お前がケイティを失うのとは訳が違う」と諭します。それだけ、ケイティがハベルにとって精神的な支柱になっていることを、きちんとJJは理解している。ここも物語のポイントですね。ケイティが嫌っていたブルジョワの彼らが、実はケイティの本質を見抜いている。人を外見や第一印象で判断しているのは、ケイティも同じなわけです。

それにしても、当時37歳!(大学生役やるには多少の無理が。)のロバート・レッドフォードの美しさときたら、表現する言葉を失いますね。あのブルーアイズで見つめられたら、誰でもコロッといってしまうでしょう。また白い海軍の制服が似合うんだなあ。ダンガリーシャツをさらッと着ているだけでも絵になってしまう。

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ブラピに見えるなあ。

鼻でっかち(失礼!)のバーバラ・ストライサンドとは不釣り合いだと思ってしまうのだけど、だんだんと彼女が可愛く見えてくるんだから、まさにマジック。

Sex and the City」の彼女たちが「見るたびに泣いちゃう」と言っていたラストシーン。Forestも滂沱のように流れ落ちる涙を抑えることができなかった。

一人娘を設けたものの離婚。

10年後に2人は街で偶然に出会う。ハベルは若く美しい(そしてストレートヘアの!)の妻と一緒に、ケイティは相変わらず「原水爆反対!」のビラを配っている。ハベルと結婚していた時は、ヘアアイロンでストレートヘアにしていたケイティだが、天然パーマのカーリーヘアに戻っている。

ここもポイントですね。彼女はハベルといた時は、どこか取り繕っていた。本来の自分でいられなかったのでしょう。彼のことを愛していたけど、どうしても溝は埋められなかった。

彼と別れて、ヘアアイロンを使うこともやめ、素に戻ったということですね。

そして相変わらず何かしらの社会運動に身を投じている。変わらないなあ~、でもそれがケイティだし、ありのままの彼女を受け入れられなかったハベルは、彼女から離れるしかなかった。切ない、切なすぎる。

そこでハベルの若い妻を見たケイティの一言、「Your girl is lovely.」

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Your girl is lovely, Hubell.

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ハベルの頬をそっと撫でるケイティ

Sex and the City」のキャリーたちによると、「世な中にはケイティガールとシンプルガールの2種しかいない。私(キャリー)はケイティガールなのよ!(結婚するには面倒くさいタイプってこと)」ってことらしいですが、大いに納得しますわ。

サマンサには「Chic film!(女々しい映画)」とバカにされてましたが、こんなに映画観て泣いたのは久しぶりで、どっと疲れてしまった。。。

もう内容忘れないです。しっかりと脳裏に刻み込まれました。

10年後くらいにまた観たい気持ちになるだろうな。ケイティみたいに主張を曲げずにいられる女性はみんなの理想像なのだろうと。今、彼女がいたら「ウクライナ反戦」を訴えていたに違いない。ニューヨークの街角で、今も何かを主張してビラを配っているケイティがいるような、そんな気がしてしまう映画。

監督のシドニー・ポラックはアカデミー作品賞と監督賞を受賞した「愛と哀しみの果てOut of Africa)」「ハバナ」でもロバート・レッドフォードと組んでます。他にもダスティ・ホフマンの女装が話題になったコメディ「トッツィー」などのヒット作を監督として世に出しただけでなく、プロデューサー、俳優としても数々の作品にクレジットされてます。

今回、改めて彼の関わった作品を見ると、Forestも観たことのあるラブロマンスジャンルが多い。韓国ドラマ好きのForestのもろタイプの監督だったのだな・・・と実感。惜しくも2008年に73歳でこの世を去った監督は、ウクライナ移民のユダヤ人家庭出身。

「恐ろしいのはソ連でもフランコでもない。世の中で起きていることに無関心な人々です!!!」と叫ぶケイティの言葉は、まるで今を生きる私たちへのメッセージのような気がしました。